長野県は八ヶ岳。日本百名山のひとつにも数えられるこの名峰群の裾野に広がる松原湖は、冬期、一面分厚い氷に覆われる。周りを囲む林も、もちろん真っ白に雪化粧。その自然が生み出したホワイトコントラストは、まるで氷の惑星さながらだ。そんな今しか見れない白銀の世界にビッグセットを持ち込み、スーパースケールな氷上ワカサギ釣りを楽しみたい! かじかむ手足、震える身体、滑る足下……。氷点下の洗礼と格闘した、SAPPORO OVER QUALITY第3弾をお届けします!
1月某日、午前3時30分。まだ草木も爆睡する頃合いから、スタッフは品川区のベイエリアに集合。暖冬だ、雪不足だ、と言われていた数日前からは、考えられないほどに寒い。一抹の不安を覚えつつ、チャーターしたロケバスに機材を搭載。改めて見てみると……荷物の量スゴっ! けれどなんとか収まった。プロのドライバーさんは、積み込み達人でもあるのだ。
到着は午前7時過ぎ。道中の僅かな眠りから目を覚ますと、そこは見渡す限りの白銀世界。キレ〜。なんて、思っている暇はない。外にはその美しさとは裏腹の、暴力的な寒さが待ち構えている。全員スノーマンさながらにフル防寒したら、詰め込まれた機材の搬入開始。ガッチガチに凍り付いた湖面は、言わずもがなツルッツルだ。慎重に、慎重に……。ソリの積載力と機動力に救われた。
滑る湖面と格闘しつつ、いそいそと作業を進める中、ひとりのスタッフが小さく叫んだ。「あ! 温度計持ってきたんだ!」。慌てて取り出した温度計の目盛りは、なんと-14℃! 冬の松原湖、恐るべし。ちなみに、この写真の時点で午前9時くらい。後で聞いたところでは、我々が到着した頃は今冬の最低気温、-20℃まで下がっていたという。どうりでマスクも眉毛も凍るわけだ。
魔法攻撃ばりの底冷えと、某芸人ばりに滑る湖面に加え、もうひとつ立ちはだかる冬の松原湖の洗礼。それは20cmにも及ぶ氷の厚さ。テントのペグ打ちには、アイスペグ用に改造した電動ドリルを使用。「楽そうじゃん」。なんて言わないで。10数本のペグダウンをこの1セットだけでやるかと思うと、それだけで酸欠になりそう……。もちろん、ワカサギ釣り用の穴を空けるのだって大変な苦労である。
ここで、今回の撮影のために新調した薪ストーブが登場! 早速組み立てて火を焚べると、散り散りで作業していたスタッフたちが、誰からともなくワラワラと集合。「蓋なんて取っちまえ!」と、かじかむ手を直火でほぐし、ホッとひと息。あぁ……。炎って素晴らしい……。その後リーダーからの激が飛ぶまでの数分間、作業がストップしたのは言うまでもない。
遡って、会議室での話し。「なんかパンチがあるものないかなぁ。氷上ワカサギ釣りのフックになるようなさぁ」。「大漁旗とかあったらオモシロいよね。ワカサギ釣りなのに(笑)。って、フザけ過ぎか」。「よーし決定、それやろう」。一同ポカーン。そんなこんなで準備された、SAPPORO OVER QUALITY特注の大漁旗。風にたなびくその姿に、やっぱり作って正解だったと確信。
今回テントは、ボトムを取り外しシェルターとして使用。ヌクヌクに作り込んだ室内に穴を開け、少しでも快適にワカサギ釣りに集中しようという魂胆だ。とはいえ、外は氷点下、床は氷という環境では、防寒具はマスト。さらに極めてアタリが繊細なワカサギ釣りでは、その場を離れることは絶対NG。ジワジワ浸透してくる底冷えに耐えながら、ジッとヒットの瞬間を待つ。
その極めて繊細なアタリに気付かず、何度も失敗を繰り返すスタッフ。しかし、どうやらワカサギはいるみたい。後は根気と慣れの勝負である。そして待つこと20分弱、遂に初めの1匹をゲット! 小ぶりながらも、周囲のスタッフから歓声が湧き上がる。釣り上げたスタッフも、なんとなくコツがわかった様子。よーし後はジャンジャンバリバリ釣るだけだ!
大方のセッティングを終え、スタッフ総出で糸を垂らすこと約1時間。気付けば、コツを覚えた何人かのスタッフの活躍により、想像以上の釣果を獲得! その数なんと30匹! 中には小さいものもいるが、堂々たる成績だ。そして最後は、そんな貴重なワカサギちゃんたちを、1匹1匹丁寧に天ぷらに。静寂の白銀の世界に、シュワッという調理音が響き渡る。
丁寧に注いだ黒ラベルが待ち構えるテーブルに、待望の釣りたてワカサギの天ぷらが到着! 熱々のワカサギを口に頬張り、これをビールで流し込んだらどんなに美味いことだろう……。想像しただけで喉が鳴る。昨晩の深夜から始まり、極寒の氷点下の中での過酷な作業が報われる瞬間は、もう目の前! スタッフは固唾を呑んで鶴のひと声を待った。
暖冬の影響で氷の張りが遅く、撮影日一週間前には企画変更まで頭をよぎった今回。しかし蓋を開ければ、今冬一の冷え込み、かつ雲ひとつない快晴と、想像以上のグッドコンディションに恵まれた、我らチームSAPPORO OVER QUALILTY。-20℃を記録した極寒の中での作業の末に辿り着いた最ッッッ高の乾杯は、やはり筆舌に尽くし難い。ビールって、やっぱり美味い!!