歴史を知るほどに、静岡の好きが大きくなる。

インタビュー 静岡が好きだから Vol.1 伝わる 静岡商工会議所 会頭 酒井公夫さん

― 「今川義元公生誕500年祭」実施の経緯について

静岡は徳川文化というイメージがありますが、徳川家が長く治めていたかというとそうでもありません。家康後の静岡は、1632年の徳川忠長改易後に幕府の直轄領となって、今で言う静岡支店長のような駿府城代が数年単位で送り込まれていました。では、現在の静岡の礎がつくられたのはどの時代と言えるでしょうか。歴史をさかのぼると、静岡では徳川時代の前に今川時代という礎があります。2019年は今川義元公生誕500年という節目の年となるわけですが、桶狭間で信長に討ち取られたネガティブなイメージがつきまとう義元公について、その業績を改めて正しく評価すべきだと考えたのが500年祭事業を始める時の思いでした。

― 「今川義元公生誕500年祭」で目指すものは

500年祭をどういうテーマでやったら良いかについて、静岡大学の小和田先生にお酒の席で相談しました。すると、「それは、今川復権!」だと。義元公は非常に優秀な武将であり、優秀な政治家であったにも関わらず、勝者がつくる歴史の中でその功績がかき消され、弱い武将のイメージがついてしまいました。地元のことを正しく知ることは、そこに住む人間にとって大変大事なことです。近年、地方の経済が疲弊してきており、交流人口を増やさなければという話題をよく耳にします。その解決策は、地元の人間が外に向けて、地元の話をすること。そのためには、やはり地元に誇りを持ち、好きになることが大きなポイントになります。まずは、地元の歴史を正しく理解すべきです。家康公も大事ですが、同じように義元公のことも正しく理解し、情報発信しましょう。それが、静岡の魅力を伝えることになり、交流人口を増やすきっかけにつながります。

― サッポロビールのサポート

静岡県焼津市でビールをつくっているのが、サッポロビール。私たちは、県外のお客様を接待するときに、サッポロビールを地元産のビールとして紹介します。すると、みなさん喜んでいただけます。まさに地元のビールメーカーが「今川義元公生誕500年祭」に協賛してくれていること、地元に貢献してくれていることにとても感謝しています。 実は焼津にも義元公とゆかりのある場所があります。今川家と縁の深い焼津でつくられたビールということにもなるので、今後さらなるバックアップを期待しています。

― 静岡をもっと元気にするには

これからは従来のような観光地ということではなく、「静岡に来れば楽しいコトがあるよ」で良いのではないかと思います。富士山が見えるところで日本茶を点てるだけでも十分です。普段、富士山を見慣れていない人が体験したら、とても感動しますよ。SNSやホテルの紹介サイト等で「いいね」をもらえる風景写真を見て、綺麗で楽しそうだから静岡に行こう、そんな感じにしたい。観光地にとらわれるのではなく、みんなに喜んでもらえるコトをどう提供するかがポイントです。 そして、静岡市は商業都市といわれていますが、2016年の製造品出荷額等で浜松市を抜きました。静岡には様々な産業があり偏りがないのが特徴です。バラエティに富んだ工業と、中心市街地に商業が集まっている静岡。この強みをさらに伸ばしていきたいと考えています。

― 静岡の好きなところは

やはり、魚が好きです。いろんなところに行って、いろんなものを食べる機会がありますが、静岡の魚は種類が多くておいしいですね。お刺身の繊細さを味わうには、ビールとの相性は抜群でしょう。地元の魚を、地元のビールでいただくのは、静岡ならではの楽しみ。魚もビールも鮮度が命ですから。それと、やはり歴史です。地元の生い立ちをさかのぼっていくと新しい発見があって、楽しいですね。海と山だけではない、それに加えて歴史と文化が静岡の強い魅力になるだろうと思います。