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人を驚かせるクリエーション。
その出発地点とこだわり。

PHILOSOPHY 想像の姿勢

“SORACHI1984”のブリューイングデザイナー、新井健司がゲストを迎え“世界に通用するクリエイティブ”を探求するスペシャルコンテンツ「SORACHI’S TALK」。第一回は『“PHILOSOPHY” 創造の姿勢。』をテーマにしたトークセッション。ゲストはファッションブランドTAAKK(ターク)のデザイナー、森川拓野。ISSEY MIYAKEで研鑽を積み、2013年にブランドを創立。オリジナリティの高い生地開発力とコンセプチュアルなデザインアプローチを武器に、数々の賞を獲得。2020年には「FASHION PRIZE OF TOKYO*01」を受賞し、コレクション発表の場をパリへと移した新進気鋭だ。業種も背景も異なる2人のクリエイターによる対話は、いかなる化学反応を起こすのだろうか。

人を驚かせるクリエーション。その出発地点とこだわり。

ーー今回、お話しいただきたいテーマは“創造の姿勢”です。お二人はどんな視点やこだわりをもってものづくりに取り組んでらっしゃいますか?

新井:私は商品を開発するとき、お客様のニーズに合わせる場合と、自分自身に向き合ってクリエイティブしていく場合があるんですが、SORACHI 1984に関しては後者です。根幹にあったのは「ソラチエース*02の魅力を余すことなく届けたい」という想い。日本のビールはさまざまなホップをミックスして作られることが多いのですが、SORACHI 1984では、ホップは1種類のみ、ソラチエースしか使わないと決めました。そして飲んだ人が驚くような味わいを作り出す。そのためには一切妥協しないというのが最大のこだわりでした。

森川:お話を聞いていると、僕と近いな、と。ファッションデザイナーは、服を作って、お客さんに届けて対価をいただく仕事ですが、こうしたらワクワクするんじゃないかっていう、自分のひらめきだったりエゴだったりを大事にしています。作ったものは自信を持って発表したいし、責任も持ちたい。だから、世の中や他人のせいにして妥協はしたくないんです。

新井:SORACHI 1984で迷わずコンセプトを決められたのは「絶対に大丈夫」という信念があったからです。まぁ、自分だけがそう言ってもプロジェクトは進まないので、会社を納得させるためにいろいろと手は尽くしました。プロトタイプは2016年にリリースしていて、そこから樽で出したり、瓶で出したり、缶で出してみたり、別コンセプトの商品との比較をしてみたり。その中でやっぱりこれが1番反応が良かったです、というデータを蓄積してここまでたどりつきました。自分の中ではなるべくしてなった、必然だと思っています。大変でしたけどね(笑)。大変でもやり通せたのは、出発が自分自身の中から湧き出てきたクリエイティブだったからだと思っています。

森川:僕の場合は、服作りを始めてから、こだわったものづくりをする環境にしかいたことがないんです。前職のイッセイミヤケでは、「どんな驚きをもって自分のこだわりを届けるのか」という意識を学びました。どうやって人を驚かせるのか。上司へのプレゼンの段階からひたすらそれを考えていましたね。だから僕は自分自身と向き合うものづくりしか知らないんです。

新井:服飾業界はすごい世界なんですね。それを苦しいと思ったことはありませんか?

森川:正直にいえば、創作の過程で苦しいなと思うこともあるのですが、この方法しか知らないというか。こういう場合、普通はこうでしょ、っていう道を選べば楽になるのかもっていうタイミングはありますが、粘ってひらめいたとき、生み出したときに得られる喜びの方がずっと大きいんです。それを知ってしまっているから、もうスタイルは変えられない(笑)。

新井:確かにひらめいたときの高揚感ってありますね。私の場合はネーミングのときかもしれません。コンセプトの企画書はうまく書けたとして、それをギュっと凝縮して名前をつけるとなると、なかなか絞り出せず。ずっと考えていたけど、どうにも思いつかなくて抜け出せなくなってしまって。2カ月くらいしてからでしょうか、ふっと思いついたんです。“1984” というのが。改めて何を伝えるべきかをもう一回分解してみて、やっぱり歴史だよな、と。自分的にもプロジェクトのメンバーたちもようやくしっくりきて進めることになったんです。

森川:やっぱり毎日考えないとですね(笑)。

新井:ですね。布団の中で思いついたりするんですけど、次の日には忘れていたり。メモを用意した方がいいっていわれますけど、本当にそうするべきだと思います(笑)。

森川:あまりにもいいアイデアがひらいた場合は、僕は隣で寝ている妻を起こしますよ(笑)。「わかった!」ってなるときがある。いろいろな要素がパズルがはまるみたいに。

新井:「わかった!」という感覚、すごくわかります。解けた感じですよね!

もしも締め切りがなかったら、延々と収集を続けているかもしれない。

新井:森川さんは、シーズンごとのコレクション制作をどんな流れで進めてらしゃるんですか?

森川:まず僕たちの強みはファブリックをオリジナルで作っていることです。もちろんすべてではありませんが、コレクションの核となる生地はオリジナルですね。「オリジナルの生地を作る」って、結構みんな簡単にいうんですけど、僕たちは機屋(はたや*03)さんと協業してイチから開発するくらいのレベル。それが、TAAKKの服作りのベースになっています。その上で、今回はどんなことをしたら面白いかなって漠然と考えます。TAAKKが積み重ねてきたコンテクストのブラッシュアップだったり、まったく新しいことだったり、いろいろと考えを巡らせていると必ず素材のアイデアは出てくるんです。そしてその生地はとりあえず作ってみます。

新井:素材開発が先行で進んでいくんですね。

森川:いえ、そういうわけでもなくて素材のアイデアとは別で、同じ時期にデザインのアイデアを練っている自分もいるんです。別々で進行しているアイデアが突然結びつくことがあって、そうなるとまた次のステップに進んでいきます。例えば、いくつかのアイデアをカテゴリーで括ってグルーピングしてみたり、こうすればわりやすくなるかも、という仮説を立ててみたり。そんなことを2〜3カ月くらい続けているといろいろな要素が集まってくるんです。アイデアの断片というか、材料というか。それを見渡してみると、今、世の中にないものかどうか、あったとしてもこういう角度ならば新鮮に見えるかもだとかが浮かんでくるんです。

ーーデザイン画を描かれたりもするんでしょうか。

森川:デザイナーは最初にデザイン画を描いて……、と思っている方も多いかもしれませんけど、僕が描くのはラフスケッチ程度です。パパっと描いて、仮に無くしてしまっても問題ないくらいの。急に絵型やスケッチを描いたとしても、自分の頭の中が空っぽの状態では、なにも生まれてこないんです。日々、自分が面白いと思うことを掘り下げて考えたり、トライしてみたり、自分なりに嚙み砕いて、自分なりに解釈しないとプレゼンするときに筋が通らないんです。だから何からはじめてコレクションを制作しているか、と問われると返答が少し難しい。

新井:要素を集めて集めて、どこかで「揃ったな」という感覚になるんですね。

森川:そうです。次のコレクションがちょうど今、そんな感覚で。まぁ、僕の場合は年に2回、きっちり締め切りが決まっているので。

新井:そうですよね(笑)。

森川:もしも締め切りがなかったら、延々と収集してると思います。でもそういうわけにもいかないので、実際には限られた期間で、限界の線引きをしています。まぁ追加で思いついたことは、なんとか追いつけるように作っちゃうんですけど。

可能性を諦めない、ものづくりの情熱を忘れない。

ーーブリューイングデザイナーはどのように仕事を進めるんでしょうか。

新井:最初に目標やタスクがあって、その達成に向かって進んでいきます。もちろん森川さんと同じように、より新しいものを作るといった観点から材料集めはします。ですが、私の材料収集は、飲んでいるだけだったりもするので、そんなにカッコイイものではないんですけれども(笑)。もちろん視野を広げたり、発想の角度や気分を変えてみたりという目的で絵画を見に行く、といったリサーチもしながらものづくりをしています。ただ、近年は、ブリューイングデザイナーとして開発したSORACHI 1984をどうやってもっとたくさんのお客様へ届けるということを意識しています。どう進化させたらお客様が驚いてくれるか、喜んでくれるか、ひたすらそんなことを考えています。

森川:今もすごく美味しいですが、さらに進化するんですか?

新井:今、考えているのは、国産のホップをもっと使っていくということ。ソラチエースって、日本で生まれたホップなんですが、国内でほとんど生産されていないんです。ほとんどをアメリカに頼っている状態なんですが、やっぱり日本で生まれたものですし、日本産にこだわりたいんです。

森川:産地によって香りが違ったりはするんですか?

新井:日本産の方が少し穏やかな香りなんです。いわゆるワインのテロワールのようなものですね。なので、そういったことも含めて、うまく使うにはどうしたらいいかと考えています。あと、そもそも栽培量も少ないので、栽培からやっていかなくちゃいけないんです(笑)。だから農家さんと協業して原料作りに取り組んでいるところです。

森川:スケールが壮大ですね!

新井:先ほど森川さんが機屋さんと一緒に生地作りをしているという話をされていたとき、ちょっと似ているなぁと思いながら聞いていました。一次産業は、最近でこそローカル回帰の風潮も少しありますが、どうしても海外産に押されてしまっています。SORACHI 1984は、仲間を増やして、一緒に歩んでいけるブランドだと思っているので、いろいろと画策しているところです。

森川:産地は北海道上富良野なんですか?

新井:実は、国内でホップの生産量が最も多いのは岩手県なんです。サッポロビールの契約農家さんも一番多い場所です。もちろん、北海道にもあるんですが、どちらかに偏らせるのではなく両方とも盛り上げていきたいと思っています。

森川:生地の産地は、例えば桐生だったり、尾州だったり、いろいろとあるんですが、それぞれに得意とする特徴があるんです。生地は、縦糸と横糸でできていて、その掛け合わせでいろいろな物が作れます。現場のプロには程遠いですが、僕はある程度の知識を持っていて、共通言語をもってディスカッションすることで、ようやく意図した手触りだとか質感だとかを実現できるんです。誰かが作った生地を使って服を作るよりも、機屋さんの特徴や持っている技術、機械などを組み合わせることで人が驚くような生地が作れないか、というところから生地作り、服作りをはじめています。そうすると僕のこだわりを楽しんでくれる機屋さんもいて。

新井:面白いじゃん、みたいな。

森川:そうです。そういう人と一緒にものづくりをしています。僕の場合はメンズクローズですし、パッと見の派手さというよりは、細かいところまでこだわったものづくりになっていくので。

新井:私たちは醸造する際に、これまでの知見や材料をベースにすることが多いです。その組み合わせを工夫して新しいものを生み出そうとしてきましたが、“新しい組み合わせ”を越えて、“この世にまだないもの”を作り出すっていうのはなかなか大変ですね。でも、これからのものづくりってそこまで踏み込んでいった方がいいのかも、と森川さんのお話を聞いて思いました。

森川:もちろん僕も組み合わせによる新しさですよ。でもちょっとした新鮮さとか落とし所って絶対にありますよね。誰もがやりつくしたと思っていても、まだ絶対になにかが残ってるって信じて取り組んでいます。本当に斬新すぎると誰にも響かないなんてこともありますけど(笑)。

ーーここまでお話を聞いていて、まったく違うフィールドで活躍されているお二人なのに、こんなにも似たところがあるんだなって、驚きました。

森川:僕は昔、ビールを作ってみたいって思っていました(笑)。それが関係あるかどうかはわかりませんが共感できることが多かったですね。

ーー新井さんは、森川さんと対談してみて、想像通りだったことや、意外だったことはありますか?

新井:森川さんとは何度かお会いしているし、ある程度は想像通りですね。今日改めて思ったのは、森川さんは目的地を定めるというよりは、自分自身がいかに進化できるかっていうことを大切にしているんだなと。言語化するなら……、求道者、そんな印象を持ちました。自分は職業柄、ある程度売れるものを作らないといけないし、もちろんそのために自分自身をアップデートしなくちゃいけないんですが、お客様のことを考える気持ちの方が強くなるシーンも多いもので。それを悪いとは思っていないんですが、SORACHI 1984を生み出した時のパッションというか、あの時にような真っ直ぐなものづくりを、定期的にできたらいいなと思いました。森川さんのようなひたむきさで。

森川:ダブル*04の時はどうだったんですか?

新井:ダブルは本当に自分が欲しいと思う商品を作りました(笑)。まだまだあるんですよ、自分が飲みたいもの。

森川:僕はダブルが大好きです。SORACHI 1984も美味しいんですが、また違った美味しさ。ガツンとくるんですよね。両方とも冷蔵庫にはいっているのが理想です(笑)。

新井:ありがとうございます(笑)。SORACHI 1984のエクステンションシリーズを開発するときは、やっぱり力が入りますね。ソラチエースの可能性をどう引き出すかを考えるのはやっぱり楽しいんです。


*01 「FASHION PRIZE OF TOKYO」は、すでに国内外で知名度のある東京のファッションデザイナーを1組選定し、パリでのファッションショー形式のコレクション発表をサポートするファッションプライズ。主催は東京都・一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構。2018年はMame Kurogouchi、2019年はAURALEEが受賞した。
*02 サッポロビールが1984年に開発し、品種登録したホップ。ヒノキやレモングラスを思わせる強い香りが特徴。
*03 生地メーカーのこと。
*04 以前に限定発売されていた、「SORACHI1984 DOUBLE」のこと。「SORACHI1984」の2倍量のソラチエースホップで香り付けした、とことんソラチエースを楽しめるビール。

TAAKK/ ターク  デザイナー 森川拓野

TAAKK/ ターク
デザイナー 森川拓野

株式会社イッセイミヤケにて「ISSEY MIYAKE」「ISSEY MIYAKE MEN」のパリコレクションの企画デザイン担当などを経て独立。 2012年、森川デザイン事務所を設立し、自身のブランド「TAAKK(ターク)」を立ち上げる。「TOKYO FASHION AWARD 2017」に選出、パリやニューヨークでの展示会を経て、2019年には「FASHION PRIZE OF TOKYO 2020」を受賞。翌年には、ブランドとして初めてパリでランウェイショーも行い、国内、海外市場ともに成長を続けている。
サッポロビール SORACHI1984ブリューイングデザイナー 新井 健司

サッポロビール ( 株 )
SORACHI1984ブリューイングデザイナー 新井 健司

2007 年サッポロビール ( 株 ) 入社。価値創造フロンティア研究所で、発酵・酵母関連の研究を担当。 2010 年 9 月に九州日田工場製造部(現 醸造部)へ異動、ビールの仕込、発酵・貯酒、ろ過工程を担 当。2013 年 9 月からドイツへ留学し、ミュンヘン工科大学 Weihenstephan 校で醸造技術を学ぶ。 2014 年 9 月帰国後、新価値開発部などを経て、新商品開発業務に従事。「SORACHI1984」ブリュー イングデザイナーとして、マーケティングから開発までを一手に担当している。
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