
ヱビスは誰よりもビールの無限の可能性を信じ、ビールづくりをたのしみながら130年にわたって挑戦を続けてきました。2025年2月には〈さぁ、いい顔でいきましょう。〉というメッセージを掲げた新CMをスタート。このCM放映と併せて、特別インタビュー連載 「#いい顔の人たち」をスタートします。
Vol.2では、グローバルで活躍をされるバイオリニストの木嶋真優さんをお迎え。2016年には第1回上海アイザック・スターン国際バイオリン・コンクールにて優勝を果たし、その後もアジアや日本のオーケストラとも共演を重ね高く評価されながらも、最新アルバムDearでは気鋭のジャズピアニスト・大林武司さんとのコラボレーションで新境地をひらかれた木嶋さんへその活躍の源泉をお伺いしました。
マルタ・アルゲリッチの姿に学んだ、努力を努力と思わず突き進む姿勢

- 3歳からバイオリンをはじめ、13歳でザハール・ブロンさんに師事するためにドイツへ留学しケルン音楽大学大学院を首席で卒業された木嶋さん。どのようにバイオリンに向き合われてきたのでしょうか。
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スイス・ルガーノの音楽祭などで共演し、ずっと一緒に演奏してきているマルタ・アルゲリッチさんというピアニストがいます。舞台に登場するだけで会場が湧き立つ世界的にスターピアニストですが、彼女はコンサートが終わった後も次の日の朝までずっと練習をしているような努力を惜しまない人なのです。その彼女の姿勢から、絶対に精進することをやめないようにしよう、そう感じるようになりました。
- 同じように音楽の高みを目指す彼女の姿勢にから、どのような刺激を受けましたか。
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彼女のような人をみていると、好きなことを追求することを努力とは思わず、当たり前に突き進んでいるように思います。わたしは3歳からバイオリンをはじめて13歳でドイツに行くことを決断し、ドイツ語も話せないまま3ヶ月後にはケルンにいました。あの時は大変だったけれど、今思えば毎日がたのしくてウキウキしていました。
新しい領域に挑戦するたのしさを支えるのは、確かな裏付け
- 新作アルバム『Dear』では、ジャズピアニストの大林武司さんとの初のコラボレーションをされています。ジャズの作曲やアドリブにも本格的に取り組んだとのことですが、全く違う舞台に飛び込んだその心境とはどのようなものだったのでしょうか。
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私はずっとクラッシックの世界にいますが、いろいろなジャンルの音楽が好きで、ジャズやポップ、ロックなどにも興味がありました。今、新たに挑戦できることがないかを探したなかで、今回コラボレーションしたジャズミュージシャンとの出会いがありました。
- 新しい領域にチャレンジすることは、大変なこともあったのではないでしょうか。
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ジャズとクラッシックは一つ一つ細かなテクニックなどにも違いがあり大変なことはありますが、勉強をすることがとてもたのしいんです。音楽って音をたのしむって書きますが、まさにそう。ジャズという新たな音を習得することがたのしくて仕方なかった。
ただやはりどの仕事をするにも、『裏づけ』が必要だと思います。音楽の舞台の上で100%自分がたのしむためには、自分のすべてをまっさらにさらけ出す必要があります。その状態に至るまでの過程が裏付けとなるんです。その先には、お客さまからの拍手をいただく瞬間が待っている。舞台の上ですべてが報われる気持ちになります。それは異次元の幸せなんです。
たのしむって、たのしいだけじゃない。
でも、そこまでの過程も大変なことも、向かった先のすべてが幸せの記憶になっています。
違う世界からは、自分の場所がより見える
- ジャズへの挑戦以外にも、TVでの活躍など新しい環境への挑戦を数多くされています。これらに取り組む際のモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか。
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一回きりの人生の中で、いろいろな世界にチャレンジしてみたいという信念があります。今までとは違う場所に飛び込むことで、今までの自分のいる場所がより鮮明になり、あたり前に生きてきた世界や自分自身と向き合うきっかけになります。新たな人とのつながりが活力を生み、より音楽をたのしめるようにもなりますね。
- チャレンジすることがモチベーションの源泉になるんですね。
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わたしは日本語やドイツ語など、言語というものが好きで、話すことも好きなのですが、音楽の違うジャンルというのは、新たな言語のひとつだと思っています。その新たな言語を学ぶことが、改めてわたしに音楽をたのしむということを教えてくれています。
心と魂が丸裸になる舞台の上で、等身大でいることが人生の大きな喜びに。
- バイオリンを演奏される際に一番大切にしていることはどのようなことですか?
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コンサートでは毎回、もう今日が最後でも良いと思い、全身全霊で臨むようにしています。やっぱり舞台は心と魂が丸裸になる瞬間で、本当に偽れないものです。自分自身がすべて等身大で表れます。言葉や表情よりも伝わってしまうから音が一番怖いです。それでも毎日の積み重ねがあれば、ありのままの自分で音楽を本当にたのしむことができると感じます。
- そんな木嶋さんが達成感を感じるのはどんな瞬間ですか?
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達成感が感じられる瞬間は、やっぱり舞台です。お客様の拍手やそのときの空気感、臨場感など、舞台でしか味わえないものがあります。舞台上では、演奏家同士で音での会話をしているような世界があって、その空気を感じられた時が音楽家で良かったなと思う瞬間です。生で音をたのしむ瞬間です。
ケルン時代を思い出すヱビスと共に。音楽やクラシックを生で体感することの価値・文化を広めていきたい。
- ヱビスビールは普段から飲まれますか?お酒を飲むときに大切にしていることもあれば教えてください。
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ヱビスビールは普段からよく飲みます。13歳で留学したケルンには、ケルシュというドイツの地ビールがありますが、現地の方はお水よりもお手頃なこのビールをよく飲んでいました。練習が終わった後やコンサートの後には、みんなでビアハウスのような場所に行くことも多く、ビールはとても身近な文化でした。わたしが初めて飲んだお酒ももちろんドイツの地ビールです。ちょっと苦みがあって濃厚な味わいがヱビスビールと似ていて、当時を思い出す味わいです。
お酒飲むときには、対話を大切にしています。好きな人や家族、友人などと飲むこともありますが、やっぱりコンサートの後にもよく飲みます。舞台上では音楽で対話をするけれど、お酒を挟むと言葉で対話ができるんですよね。人と人、もの、音楽など、何かを繋げあいたいときにビールやお酒を飲みに行きます。
- これから木嶋さんがチャレンジしていきたいことはありますか?
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いろいろなことがデジタル化、デバイス化し、生じゃなくてもたのしめる時代になってきているけれど、やっぱり一緒に過ごす空気をもっと体感してほしいと思います。お酒を誰かとたのしむことはもちろん、生で音を聞くということも。今日はクラシックに行こう、明日はポップス行こうよ、というふうに伝統的な音楽も生でたのしんでほしい。その場の空気でお酒の味も変わるように、音もその場の空気で感じ方が変わるので、もっと気軽にライブやコンサートに行く文化をたのしむ人が増えたらいいなと思います。
バイオリニスト
木嶋真優(きしままゆ)
神戸生まれ。3歳でバイオリンを始め、13歳でザハール・ブロンに師事するためにドイツ・ケルンに留学。これまでに、サンタ・チェチリア国立管、ロンドン響、バイエルン放送響など欧米豪のオーケストラに加え、中国フィル、広州響、台北響、東京フィルなど、アジアや日本のオーケストラとも共演を重ね高く評価されている。2024年8月にキングレコードより最新アルバム「Dear」をリリース。これまでに林泉、戸上和代、江藤俊哉、ドロシー・ディレイ、川崎雅夫、小栗まち絵、工藤千博、ザハール・ブロンの各氏に師事、2012年春にはケルン音楽大学を首席で卒業、2015年秋には同大学院を満場一致の首席で卒業し、ドイツの国家演奏家資格を取得、また2016年秋には神戸市より神戸市文化奨励賞を授与された。
