
ヱビスは誰よりもビールの無限の可能性を信じ、ビールづくりをたのしみながら130年にわたって挑戦を続けてきました。2025年2月には〈さぁ、いい顔でいきましょう。〉というメッセージを掲げた新CMをスタート。このCM放映と併せて、特別インタビュー連載 「#いい顔の人たち」をスタートします。
Vol.1となる今回は、SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役である建築家・起業家の谷尻誠さんをお迎え。ただ物件の売買を行うだけでなく、立地の絶景を活かしたデザインやリノベーションの提案なども行う「絶景不動産」や、建築設計とテクノロジーを融合させたオンラインプラットフォーム「tecture」の開発など、様々な分野で建築家の幅を超えて活躍する谷尻さんに、新しいものを生み出していくときのマインドや、そのたのしみ方などを伺います。
スマホで家を買える時代へ。NOT A HOTELに携わったきっかけ
- NOT A HOTELは、別荘でありながら、ホテルにもなるという全く新しい施設。シェア購入可能な仕組みなど、これまでの住宅やホテルの概念を拡張されました。このプロジェクトにはどのようなきっかけで参画されたのですか?
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NOT A HOTELの濱渦さんから『携帯で家を買う時代を作りたい』という言葉をいただき、感銘を受けたことがきっかけです。濱渦さんとは以前の会社のころから知り合いでしたが、たまたま僕らがやっていた絶景不動産という不動産会社に、設計も一緒にお願いできませんかと相談をいただいたんです。
NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE外観 撮影/Kenta Hasegawa 高価なものをスマホで気軽に買えるということを今まで考えもしませんでしたが、高級車のテスラがスマホひとつで購入体験ができる今の時代を目の当たりにしてみると、珍しいことでは無くなっていく可能性はすごく感じていました。
しかし、濱渦さんの力になりたいとは思いながらも、家をスマホで買う時代はまだ早く、同時に売れなかった時には設計への責任になるのではという不安も頭を過りました。施工前の段階から空間の良さをどう人に伝えられるのか、何をすべきか苦労の仕方も分からないまま「ひたすらいいものにしましょう」ということだけを胸にし、霧の中を模索するように話を進めていきました。
もっとこうしたい。ネガティブな意見がある時こそチャンス

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霧の中を模索するように…とのことですが、大変なこともあったかと思います。
仕事をする上で大切にされている信念などはありますか? -
ネガティブな意見がたくさん出る時は、あえてネガティブ側に進もうとします。その状態を言い換えれば、まだその価値化されたものが世の中にないからであって。そのネガティブ側を価値化していく最先端に自分が立っているということの表れなので、むしろ反対意見が出れば出るほど、チャンスだと思って進んでいきます。
難しい道ではありますが、本当の問題点を炙り出して早く問題に直面でき解決できるということで、進むべき道が見えてくるのです。一見困難なようですが一番いい道でもある気がしています。
- 問題があるときほど、道が見つかりやすいのですね。
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いつも達成感が持てないんです。いつも不満なんです。だから続けているのかもしれません。もちろん、たのしいと感じることはたくさんあります。チャレンジしようとしている時どうやって辿り着くのか考えている時が一番ワクワクしています。
すべて自分でやってみることが、本質的なたのしさへ繋がる
- ヱビスは〈たのしんでるから、世界は変えられる。〉というメッセージを打ち出しています。NOT A HOTEL NASU MASTERPIECEや、そのほかのプロジェクトにおいて、たのしみながら取り組むために大切にされていること・意識していることはありますか?
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とにかく、『自分でやってみる』ということじゃないですかね。設計者は設計しかしていないと、運営する人や集客する人の気持ちはわからなくなっていってしまうんです、本質を見るためにも、自分でやってみることを大切にしています。
- 本業とは違うことにもチャレンジをされるんですね。
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比較優位性ということをいつも考えています。建築の仕事においてデザインコンペに参加すると、どのデザインも良いのは当たり前なので、好き嫌いで選ばれてしまうことに直面します。しかし、デザインも良い上にビジネス的な観点やマーケティングのことまでを含めた提案ができれば、信頼度が高くなり選ばれる確率があがりますよね。自分の仕事を拡張して捉え、やっておいた方が良いことにはチャレンジしたいと考えています。
世界の凝り固まった価値観を溶かしていく
- これからさらにチャレンジしたいことや、変えていきたいことはありますか?
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何かを大きく変えようとはあまりしていないんです。それよりはむしろ『溶かしていく』という表現をいつもしています。世の中の凝り固まっている考え方やルール、仕組みのようなものを溶かしていくことで、いずれは全体が変わっていくことになるんじゃないかなと思っています。
たとえば建物は、暗いよりは明るくなるように設計する方が正義だと思うのですが、実際に暗い家に入ってみると、落ち着くなと感じたりとか、その暗さが心の内側と向き合えたり、普段話せないことが話せる空間になったりということもあると思うんです。
一見ネガティブに思える暗さも、ある見方をすれば価値が必ず存在しているはずです。そういう自分たちが感じた価値を少しずつ伝えていくことができれば、社会が動いてくれるのかなと思っています。
ヱビスのようになぜか手に取ってしまう“なんかいい”ものを目指して
- ヱビスを普段から飲んでいただけていると伺いました。
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ヱビスビールは普段から飲んでいます。ビールやお酒を飲むときには、いい音でお酒を飲みますね。音の環境がいいとお酒の味が美味しく感じるので、その時の気分や時間に合わせて、本当になんでもあらゆるものを聴きます。
- それは素敵ですね。ヱビスのここがいい!という部分はありますか?
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ヱビスはこれだという理由がなくても、なぜか選んでしまう。そんなビールだと思います。やっぱり、いいものって“なんかいい”んです。つい手に取ってしまう。〇〇だからいいと決めつけるのではなく、習慣的に“なんかいい”と感じられるものこそ、素晴らしいプロダクトなんだと思います。
建築家・起業家
谷尻誠(たにじりまこと)
SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役。
1974年 広島生まれ。2000年建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE設立。2014年より吉田愛と共同主宰。広島・東京の2ヵ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設まで国内外合わせ多数のプロジェクトを手がける傍ら、近年「絶景不動産」「tecture」「DAICHI」「yado」「Mietell」をはじめとする多分野で開業、事業と設計をブリッジさせて活動している。2023年、広島本社の移転を機に商業施設「猫屋町ビルヂング」の運営もスタートするなど事業の幅を広げている。
http://www.suppose.jp
