ワインメーカーとしての喜びとは?
- 多田
- ぶどうづくりもワインづくりも、1年2年でできるものではありません。10年20年かけてやっとわかることがたくさんあり、それでもなお完成形ではない。樹の成長がそうであるように、先輩たちが残してくださったものですら変わってゆきます。だからこそ、次の世代へとつなげてゆくためにも、栽培方法、醸造方法を常に探求し続けることが大事なのだと感じます。
その一方、短期的な視点で考えると、お客様のニーズや外部環境は日々変わっているので、そうしたものへの対応力も欠かせません。本当にチャレンジングでやりがいのある仕事ですね。
- 工藤
- 工業製品は決められた規格どおりにつくることが大切ですが、ワインの場合は年ごとに気候も変わるので、前年に確立した方法が翌年通用するとは限りません。それでも我々は、どんな年でもぶどうの力を100%出してやらなくてはいけない。それがワインメーカーの仕事であり、そのためには知恵と工夫と観察力が必須です。
- 多田
- 例えば、同じピノ・ノワールという品種でも、北海道の余市と長野県の安曇野池田ではキャラクターが違いますよね。にもかかわらず、同じつくり方でぶどうにアプローチしたのでは、それぞれのポテンシャルを活かしたワインはつくれません。余市には余市のぶどうに合った栽培と醸造方法があり、安曇野池田にはその特性を見極めた方法があるはずです。産地だけ考えてもそうなのですから、年によってワインづくりが変わるのは当然のことと思います。