醸造工程で失われる香りがもたらす「ビールらしさ」 日本農芸化学会2020年度大会で「トピックス演題」に選定
ビールの醸造工程をより深く理解し、新商品開発の可能性をひらく
サッポロビール(株)は、高田香料(株)との共同研究の成果を「醸造工程中に失われる香りから見出されたビールらしさに寄与する香気成分」として日本農芸化学会2020年度大会(注1)において発表し、その研究内容が評価され、(公社)日本農芸化学会から「2020年度大会トピックス演題」(注2)として選定されました。
ビールは原料や醸造に由来する成分により複雑な香りが形成されており、いまだ解明されていない点が多数あります。両社は、ビールの醸造中の揮発などの変化で失われる成分について、気体部分を捕集する新しいアプローチを行い、それらを詳しく分析しました。
その解析結果から、今まで注目されてこなかった「醸造工程で失われる」香り成分に「ビールらしさ」を向上させる効果があることを見出しました。
当社は、これらの研究成果を商品開発技術に応用し、これからもビールテイスト飲料のさらなる魅力を引き出すことで、多様なビールの楽しみ方を提案していきます。
1.「醸造工程で失われる」香り成分の探索
ノンアルコール(注3)の原材料には「ビールらしさ」に着目して開発された香料もあります。従来の香料は、ビールに近い香味を実現するために、製品のビールに含まれる香り成分を分析してつくられてきましたが、ビールと同等の香味の再現には、まだ課題が残されていました。そこで、新たなアプローチとして、ビールの醸造工程で生成される香り成分の消長を、気体を捕集できるサンプリング技術とにおい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)などの分析技術を組み合わせ、くわしく解析しました。その結果、さまざまな成分が醸造工程中に生成・消失していく複雑な挙動がとらえられ、製品のビールには含まれていない、もしくはごく微量であるために見落とされてきた12の香り成分を見出すことができました。
2.「醸造工程中に失われる」香り成分の「ビールらしさ」に対する効果
見出した12の香り成分の効果を確認するために、従来通り製品のビールに含まれる成分のみで構成した「モデル香料」に、12の香り成分をそれぞれ1成分ずつ添加して、「ビールらしさ」を官能評価(注4)するとともに、「麦芽・穀物感」「ホップ感」「発酵・熟成感」「味の厚み」および「キレ」の6種の特長にも着目して、評価を行ないました(図2)。その結果、それぞれの成分に香味特長を向上させる効果があり、また、成分ごとにも異なる特長が見出されました。次に、12の香り成分すべてを「モデル香料」に加えたところ、評価したすべての香味特長が「モデル香料」に比べて向上し、その結果として「ビールらしさ」を向上させる効果が確認されました。これらは、今後の商品開発への応用だけでなく、複雑なビールの香り研究の新たな可能性にもつながると考えられます。
(注1) 日本農芸化学会は、バイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、2020年の年次大会は3月25日~28日(会場:福岡市西区・九州大学)。(大会の開催は中止。学会要旨集の発行にて発表として取り扱われます)
(注2) 同学会年次大会の一般講演登録演題(2020年度は約1,598題)から31題を大会実行委員会と広報委員会が選定します。(本年は大会要旨集の発行にて発表成立)
(注3) ノンアルコールビールテイスト飲料。
(注4) 訓練されたパネル8名で実施。それぞれのコメントについて1~5点までの評価をした平均値。
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