ニュースリリース

ヱビスビールのコクの秘密は「余韻」にあり!

~ヱビス酵母が醸す香りの秘密を感性科学で解明~

サッポロビール(株)とサッポロホールディングス(株)はヱビスビールの特長である、コク深さのもととなる「ヱビス香(こう)」(注1)を感性科学の手法で分析し、この香りが、飲んだ後にヒトが口中で感じる「後香(あとか)」をふくよかにすることで、同商品特有の「余韻」にまで関わることを解明しました。同社はこの内容を「EUROPEAN BREWERY CONVENTION 37th CONGRESS(第37回ヨーロッパ醸造学会大会・2019年6月2日~6日・アントワープ)」(注2)にて報告しました。

ヱビスビールに用いる「ヱビス酵母」は、ヱビス専用の酵母であり、選び抜かれた麦芽、ホップと相まって、「ヱビス香」と呼ばれる特別な香りを生みだします。

本研究では、ビールを飲んだ後にその香りが口中から鼻腔にぬける過程で感じる「後香」の経時変化を「余韻」とみなし、最新の分析機器を用いてリアルタイム香気分析を行いました。さらに官能評価の新手法によってビールの銘柄ごとに「後香」の経時変化を追跡した結果、特にヱビスビールでは「後香」として「ヱビス香」の一部である「エステル香」がより長く残り、深い「余韻」をつくりだしていることが明らかになりました。「エステル香」は、ビールに華やかさや豊かさをもたらす、フルーティーな香り成分を指します。

これらの結果から、ヱビスビールの「余韻」が深いというお客様の「実感」を科学的に証明することができました。今後、この技術を利用し、よりコクのあるビールを実現するための醸造技術の追求や、新商品の開発を行い、さらなるビールの楽しみ方を提供していきたいと考えています。

1.最新機器分析による「余韻」の科学的評価

当社ではコクのあるプレミアムビールとして「ヱビスビール」のおいしさにこだわり、特有の「ヱビス香」(注1)を形成する香り成分、それを実現する酵母技術、醸造技術など多様な研究を行なってきました。

今回、深い「余韻」の実感につながる要因としてビールを飲んだ後の「後香」に着目しました。

直接感じる「立ち香」に対し、飲用後、口中から鼻腔にぬける「後香」はごくわずかな量であるため、これまで分析が困難でした。そこで、最新の分析機器「プロトン移動反応TOF質量分析計(PTR-TOF)」(注3)を用い、ビールの「リアルタイム香気分析」を行うことで、ビール飲用後の「後香」の成分を個別に数値化し、経時変化を評価しました。その結果、各成分の変化はビールの銘柄ごとに異なり、特にヱビスビールでは「後香」として「ヱビス香」の一部である「エステル香」に寄与する成分がより長い時間残ることが明らかになりました(図1)。

2.最新官能評価手法による「余韻」の科学的評価

図1で示した機器分析での結果だけではなく、ビールの「余韻」をより人間の「実感」に近い形で評価するため、ビールを飲んだ時のヒトが感じる「後香」を可視化する官能評価の新手法であるTCATA法(注4)を用い、「ヱビスビール」の「後香」の経時変化を追跡しました。その結果、同商品では「エステル香」が長く残り、ヒトの感じる「実感」が機器分析の結果と合っていることも、明らかとなりました(図2)。

これらの結果から、「ヱビス香」の一部である「エステル香」に寄与する成分は「後香」として口中により長くとどまり、それは官能的にも「実感」できること、すなわち、「ヱビス香」がヱビスビール特有の深い「余韻」をつくりだしていることが明らかとなりました。


(注1)ヱビス香
コク深さのもととなる「ヱビス香」は、ヱビスのみに使用することを許された門外不出の「ヱビス酵母」が醸し出します。選び抜かれた麦芽、ホップの香りと「ヱビス酵母」の華やかな香りがバランスしたもの。エステル香もその一つ。
(注2)EUROPEAN BREWERY CONVENTION 37th CONGRESS(第37回ヨーロッパ醸造学会大会)
EUROPEAN BREWERY CONVENTIONの主催で欧州にて2年に一度開かれる大会。ビール醸造の分野では世界的に権威のある国際学会のひとつとされています。
(注3)プロトン移動反応TOF質量分析計(PTR-TOF)
Innsbruck大学イオン物理研究所の基礎技術を応用したプロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)は、ppq(ppq=10-15(ppmは10-6))レベルの超高感度な特性を持ち、「後香(レトロネーザルアロマ)」の種々の成分のリアルタイム測定に求められる多成分同時・高時間分解能測定が可能な唯一の装置です。
(注4)TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)法
TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)法は、サンプルを口に含んでから、回答画面に表示された複数の香りの特徴について、都度感じたすべての特徴を選択し、感じなくなった特徴は都度選択を解除することで、ヒトが感じる香りの特徴の持続性について経時的なデータを取得し、グラフ化できる官能評価手法です。本研究ではビールの香りの「余韻」の評価に本手法を用いました。

以上

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