ニュースリリース

国内初「第36回ヨーロッパ醸造大会」で3大会連続の最高賞を受賞

~日本生まれのホップ「ソラチエース」の香りに関する研究実績が評価~

 サッポロビール(株)は、日本生まれのホップ品種 「ソラチエース」の香りに関する研究について「第36回European Brewery Convention(ヨーロッパ醸造学会・以下「EBC」)大会・2017年5月14日~18日・スロベニア)」にて発表し、ポスター部門の最高賞であるBest Poster賞を受賞しました。

 当大会は2年に一度開催され、ビール醸造技術に関する世界的に権威のある学会のひとつです。ヨーロッパのみならず、日本をはじめ世界からビール醸造の研究者が集まり、口頭部門52題、ポスター部門102題の発表が行われました。各部門で最も優秀な発表各1件に対し、Best Paper賞、Best Poster賞の最高賞が選ばれます。

 当社は国内で同賞の受賞歴がある唯一のビール会社であり、今回の受賞により、3大会連続の最高賞受賞というさらなる快挙となりました。

 

 

以下に、最高賞を受賞した本年の発表概要および過去2回の受賞研究概要を紹介します。

 

【 2017年 Best Poster賞 】

Identification of geranic acid contributing to varietal aroma in SORACHI ACE and synergy with other hop-derived flavour compounds (ソラチエースの特長香成分ゲラン酸とホップ由来の香気成分の相互作用について)

 

「ソラチエース」は当社が1983年に育成したホップ品種で、近年、ユニークな香りを作り出すとして、世界中のクラフトビールファンの間で注目を浴びています。「ソラチエース」の特長香は「森林」「ディルハーブ」「レモン」「レモングラス」など様々に表現されますが、その香りの成分は明らかになっていませんでした。本研究では「ソラチエース」の特長香は、他の品種にはあまり含まれていない「ゲラン酸(注1)」という成分がキーであることを解明しました。また、ソラチエースの香りは「ゲラン酸」だけでは再現されず、「ゲラン酸」とその他のホップの香気成分が複合的に組み合わさったことで形成されることが分かりました。さらにその知見を発展させ「ゲラン酸」を含むソラチエースと他の特長的な香りをもつホップ品種をブレンドして醸造することで、これまでにない多様な香味を持つビールをつくり出せることを示しました。

 

本研究は、2017年度日本農芸化学会大会(2017年3月・京都)においても発表され、一般講演登録演題(2017年度は約1‚900題)の中から「農芸化学大会トピックス賞」に選ばれました。

 

(注1)  ゲラン酸: レモングラスや木の香りにたとえられる、柑橘類の果実やワインなどに存在する有機化合物

 

 

            2017年 Best Poster賞 表彰式              2017年Best Poster賞 谷川篤史

 

【過去2回の最高賞を受賞した発表の概要】

 

1. 2015年 Best Paper賞

Beer Foam Quality –Identification of Foam Proteins by Proteome Approach‐(ビールの泡品質 ~プロテオーム解析による泡関連タンパク質の同定~)

 

ビールに含まれるタンパク質を網羅的に解析することで、ビールの泡品質に関与するタンパク質および遺伝子を同定しました。さらに麦芽に加工する前の大麦の状態でビールの泡持ちが良いか否かを簡便に調査できる技術(遺伝子診断技術)を開発し、従来は約10年を必要としたビール大麦育種での泡持ちの品質評価が、本研究により、最短1年で評価・選抜することが可能になりました。

 

2. 2013年 Best Poster賞

Screening of flavour compounds in beer and brewing materials using TRP channel assay(TRPチャネルアッセイ法による呈味性物質の探索:ビールおよび醸造原料に含まれるTRPチャネルアゴニストの探索)

 

人の味覚の感知には、ある種の味覚受容体が口腔内の刺激(たとえば痛覚)に関わっています。本研究では、ビールや醸造原料の成分を詳細に解析し、ビール原料の一つであるホップの水抽出物が味覚受容体の一種と反応することを初めて見出しました。

 

以上 

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