国産ホップの発見、そして育種技術の確立へ

国産ホップの発見、そして育種技術の確立へ

開拓使に雇われていたアンチセルは1871年、北海道内の地質調査時に野生ホップを発見します。それ以降、ホップに注目した開拓使は試験を重ね、1876年(明治9年)に開拓使麦酒醸造所が創業してから本格的な栽培を始めました。試行錯誤の末、ホップをすべて道内産で賄う自給化に成功。その後もサッポロビールはホップの育種・研究を続けていきます。そして、培ってきた培養技術を生かし、世界有数のホップの産地であるチェコのザーツ地方で起きた、ウイルスによるホップの危機脱却に貢献しました。サッポロビールはその育種・培養技術を活かし、日々ホップの開発に挑戦し続けています。

野生ホップの発見

ホップの球花
ホップの球花

開拓使に雇われていたアメリカの化学技術士トーマス・アンチセルは1871(明治4)年、道内の地質などの調査時に、現在の岩内町で野生ホップを発見。アンチセルは日本でも将来ビール産業が盛んになるという予見のもと、開拓使にホップ栽培を建言しました。北海道の気候であれば自国用はもちろん輸出できるほどホップの収穫が可能だとみていました。

ホップの自給化に成功

1877(明治10)年ごろの札幌ホップ園
1877(明治10)年ごろの札幌ホップ園
1935(昭和10)年ごろの札幌・山花ホップ園
1935(昭和10)年ごろの札幌・山花ホップ園

開拓使は、まず1876(明治9)年に開業した「開拓使麦酒醸造所」で使用するホップの自給を目指し、翌年、札幌にホップ園を設けて本格栽培に着手。しかし、植え付けた苗の大方が枯れてしまうことが何年も続きました。ホップは病気に弱く、栽培は簡単ではありませんでした。試行錯誤の末、1881(明治14)年にようやく開拓使麦酒醸造所で使用するホップを全て道内産で賄うことに成功しました。

優良品種「信州早生」の誕生

ホップ「信州早生」種
ホップ「信州早生」種
1941(昭和16)年頃の上富良野ホップ乾燥所
1941(昭和16)年頃の上富良野ホップ乾燥所

サッポロビールは開拓使麦酒醸造所の創業時からホップの育種・研究を行っています。その一つの成果が1910年(明治43)に誕生した「信州早生」種。誕生から100年以上、今もなお作付けされている優良品種です。ホップは病気に弱く栽培が困難でしたが、ホップ研究で培ったノウハウは生産者への栽培指導でも発揮され、良質な原料の調達に役立っています。

チェコのホップ危機で証明された培養技術

ホップの萌芽(直後)
ホップの萌芽(直後)
ホップの萌芽(2〜3週間後)
ホップの萌芽(2〜3週間後)

チェコのザーツ地方は、世界有数の品質を誇るホップの産地です。しかし1970(昭和45)年ごろからウイルスにより品質が低下し、収穫量も低下しはじめました。この危機を救ったのが、サッポロビールの組織培養技術だったのです。1989(平成元)年、サッポロビールが技術指導して、ウイルスフリーの苗を作出。これを栽培した結果、チェコのザーツ地方のホップは、再び従来の品質を取り戻したのです。

個性豊かなホップの開発

フラノスペシャルの球花
フラノスペシャルの球花
協働契約栽培のホップ農場
協働契約栽培のホップ農場

ホップは香味の良い「アロマホップ」と苦味成分の多い「ビターホップ」に大別されます。優良なホップをつくるための「育種」は、品種の交配・選別を長い年月にわたって繰り返すため、通常は10年以上かかります。そんな中、わずか7年で選抜できたエリート品種「フラノスペシャル」は、苦味含量が非常に多く、香味も良好で収量も多いのが特長。現在は北海道上富良野町のみで栽培されており、北海道限定商品「クラシック富良野ヴィンテージ」の特徴ある香りを演出しています。

その他、サッポロビールの代表的な開発品種には、100年以上の歴史を持つ「信州早生」、レモングラス・ヒノキ様の香りを呈し今や世界中に名を馳せる「ソラチエース」、アロマホップならではの香りを持ちつつ農業性に優れた「リトルスター」、2021(令和3)年に登録されたユニークな香りを持つ新品種「フラノマジカル」などがあります。ホップ育種の挑戦はこれからも続いていきます。